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特養の入所申込者は20.6万人|平均待機期間の公的統計はない

更新日:2026-07-31|読了目安:約9分|運営:サトコト合同会社

居間の机に立てたカレンダーと書類を前に、頬杖をついて考えている女性の水彩イラスト

特別養護老人ホーム(特養)の入所申込者は、要介護3以上で20.6万人です。厚生労働省が2025年12月25日に公表した「特別養護老人ホームの入所申込者の状況」(調査時点は2025年4月1日)の数字です。一方で、よく見かける「特養は平均◯年待ち」という数字には全国的な裏づけがありません。集計・公表されているのは申込者数だけで、待機期間はこの資料の集計事項に入っていないからです。

この記事の要点

  • 要介護3以上の入所申込者は20.6万人(2025年4月1日時点・厚生労働省)
  • 平均待機期間を示す公的な統計は、厚生労働省の公表資料に含まれていません
  • 申込者数は「現に入所が必要な人数」ではないと公表資料自身が注記しています

この調査の前回分は2022年度で、2025年度の公表がいまのところ最新です。ウェブ上には「特養の待機者は約27.5万人」と書かれた記事が多く残っていますが、これは前回の調査に基づく数字です。まず、どの数字がどの分母で出ているのかを分けて見ていきます。

最新は20.6万人。前回の25.3万人から18.4%減っている

2025年4月1日時点の入所申込者数は、次のとおりです。特養は平成27年4月から新規入所が原則として要介護3以上に限られているため、公表資料も「要介護3以上」と「要介護1・2(特例入所の対象)」を分けて集計しています。

特別養護老人ホームの入所申込者数(厚生労働省・2025年4月1日時点/前回は2022年度調査)
区分2025年4月1日時点前回(2022年度)増減
要介護3以上・全体20.6万人25.3万人4.7万人(18.4%)の減少
要介護3以上・うち在宅の人8.6万人10.6万人2.0万人(18.5%)の減少
要介護1・2(特例入所の対象)・全体1.8万人2.2万人0.4万人(17.9%)の減少
要介護1・2・うち在宅の人0.9万人1.1万人

都道府県別の集計まで見ると、要介護3以上の合計は206,479人、うち在宅の人は85,964人です。万人単位に丸める前の数字はこちらになります。

「約27.5万人」が古い数字である理由

前回調査の紹介でよく使われた「約27.5万人」は、要介護3以上の25.3万人と要介護1・2の2.2万人を足した数に相当します。今回の調査で同じ足し方をすると22.4万人で、要介護度別の内訳(後述)の合計は丸めの関係で22.5万人と表示されます。

前回と比べるときは、どちらの定義で足しているかを揃えないと減少幅がずれます。この記事では、以降は原則として「要介護3以上の20.6万人」を主な数字として扱います。

数値はすべて2025年4月1日時点、公表は2025年12月25日(厚生労働省老健局高齢者支援課)です。前回の集計時点は2022年で、この間隔だと古い数字がそのまま残った記事も長く流通します。他の記事の数字を見るときは、調査時点と公表時期を確認してください。

要介護度別の内訳では、要介護3が最も多い

公表資料の参考資料には、要介護度別の内訳も掲載されています。

入所申込者の要介護度別内訳(2025年4月1日時点)
要介護度入所申込者数構成比
要介護10.7万人2.9%
要介護21.2万人5.2%
要介護38.7万人38.7%
要介護47.6万人34.0%
要介護54.3万人19.2%
22.5万人100%

要介護3が38.7%で最も多く、要介護4の34.0%、要介護5の19.2%と続きます。要介護1は2.9%、要介護2は5.2%です。

また、この計22.5万人のうち在宅の人は9.5万人(42.2%)で、それ以外は病院や他の施設などにいる人です。在宅でない申込者がどこにいるのかの内訳は、令和7年度の老人保健健康増進等事業の報告書に反映される予定とされており、2026年8月時点ではまだ公表されていません。

この要介護度別の内訳には、公表資料自身の注記があります。各都道府県において、要介護度が把握できていない一部の入所申込者について、要介護度別の割合を基に按分するなど、各々の基準で計上している場合があるとされています。要介護度ごとの数字は、実数の集計というより、そうした処理を含んだ推計値として読む必要があります。

「平均待機期間」を示す公的統計は公表されていない

特養について調べていると「平均◯年待ち」「都市部は◯年」といった記述に行き当たります。しかし、厚生労働省が公表しているこの調査は、入所申込者の人数だけを集計しており、待機期間は集計事項に含まれていません。厚生労働省のサイトを確認した範囲では、全国の平均待機期間を示す公的な統計は見つかりませんでした。

つまり、待機期間の数字を挙げている記事があったとしても、それは全国統計として公表されているものではありません。個別の施設や自治体が独自に公表している数字、あるいは取材や個別の体験に基づく数字である可能性があります。出典が示されていない待機期間の数字は、全国どこでも当てはまる目安としては扱えません。

この記事でも、待機期間の目安は書きません。書ける根拠がないからです。代わりに、申込者数という公表されている数字が何を表しているのかを、次の章で確認します。

申込者数は「いま入所が必要な人数」ではない。公表資料自身が3つ注記している

木のテーブルに2枚の書類を並べて見比べる手元と、電卓とペンの水彩イラスト

20.6万人という数字を「いま20.6万人が入所を待っている」と読むことはできません。厚生労働省の公表資料には、集計方法に関する注記が付いています。要点は3つです。

  1. 重複の排除は、都道府県への依頼ベースであること。複数の施設への申し込みや、申し込み後に亡くなった方などを排除して実数に近づけるよう各都道府県に依頼している、という建て付けです。全国一律の名寄せが行われた結果ではありません。
  2. 長期間にわたって申込者名簿に登録されている人を含むこと。公表資料は、入所を希望する時期や条件、生活環境の変化などさまざまな事情があるため、必ずしも現に入所を必要としている場合に限らない、と明記しています。
  3. 要介護度別の数字には按分が含まれること。要介護度が把握できていない申込者について、各都道府県が要介護度別の割合を基に按分するなど、各々の基準で計上している場合があります。

1つ目と2つ目は、数字が実態より多めにも少なめにも振れうることを意味します。「いつか必要になったときのために早めに申し込んでおく」という申し込み方は珍しくなく、その人たちも名簿には載ります。逆に、申し込み自体をしていない人は、どれだけ入所の必要があってもこの数字には入りません。

同じ理由で、18.4%の減少を「入所が必要な人が18.4%減った」と読むこともできません。名簿の整理の進み方や、申し込み行動そのものの変化も、この数字を動かしうるからです。公表資料は増減の要因を分析していないため、減った理由については何も断定できません。

確実に言えるのは「2025年4月1日時点で、都道府県が集計した要介護3以上の入所申込者は20.6万人だった」ということまでです。この数字を、地域ごとの入りやすさや待ち時間の長さの指標として使うことはできません。

要介護1・2でも申し込める場合がある。特例入所の4類型

特養の新規入所は、介護保険法および同法施行規則の改正により、平成27年(2015年)4月から原則として要介護3以上に限定されています。ただし、要介護1・2の人であっても「居宅において日常生活を営むことが困難なことについてやむを得ない事由がある」場合は、特例入所の対象になります。

厚生労働省の通知「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」(平成26年12月12日 老高発1212第1号、令和5年4月7日一部改正)は、その事由として次の4つを挙げています。

  1. 認知症であり、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られること
  2. 知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られること
  3. 家族等による深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困難であること
  4. 単身世帯である、同居家族が高齢または病弱である等により家族等による支援が期待できず、かつ地域の介護サービスや生活支援の供給が不十分であること

該当するかどうかの判断は、施設の入所検討委員会の合議によって行われます。施設は保険者である市町村に報告し、必要に応じて意見を求めることとされています。判断するのは申し込みを受ける側であって、申し込む側ではありません。

この点に関して、通知にはもう一つ重要な定めがあります。申込者本人が特例入所の要件に該当すると申し立てた場合に、施設が申し込みを受け付けないという取扱いは認められない、とされています。要介護1・2であることだけを理由に窓口で申し込みを断られる扱いは、通知の想定するところではありません。

実際、2025年4月1日時点で要介護1・2の入所申込者は1.8万人(うち在宅0.9万人)が集計されています。制度上の例外が、数字の上でも一定の規模で存在しています。

参考:探し始めてから入居までにかかった期間(特養の待機期間ではありません)

待機期間の全国統計がない以上、この記事で待ち時間の目安を示すことはできません。ただし、施設探し全体にどれくらいの時間がかかっているかであれば、当サイトの独自調査に数字があります。読み違えを避けるため、先に3つの但し書きを書きます。

  • 特養だけの数字ではありません。回答者110人の入居先は特養が35%で、残りは介護付き有料老人ホーム・グループホーム・サービス付き高齢者向け住宅・住宅型有料老人ホーム・老健などです。
  • 申し込みからの待機期間ではありません。聞いているのは「施設を探し始めてから入居まで」の期間で、情報収集や見学の時間を含みます。
  • 実際に入居できた人だけの回答です。いま申し込んで待っている最中の人は、この調査には含まれていません。

施設全般では、探し始めてから6ヶ月以内に入居した家庭が85%でした(当編集部調査・n=110・特養だけの数字ではありません)。ただしこれは入居できた人だけの記録で、いま待ち続けている家庭は含まれません。

本調査はインターネット調査(クラウドソーシング利用)で、回答者はネット利用層に偏っています。割合は小数点以下を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。「相場」ではなく「入居まで進んだ110人が経験したことの分布」としてお読みください。

特養が当面難しい場合は、他の6種類が受け皿になります。入居できる条件と制度上の位置づけを一覧で整理しています。介護施設の種類は7つ|入居できる条件と制度上の位置づけを一覧で整理をご利用ください。

入居先の種類ごとに費用の構造が違うことは、同じ110人への調査で確認しています。特養を含む公的施設と民間施設で、基本料金の外側にかかる額の分布がほぼ反転していました。介護施設の費用はいくら?入居者家族110人に聞いた月額と想定外の出費をご利用ください。

よくある質問

Q.特養の待機者は今何人ですか?

A.厚生労働省が2025年12月25日に公表した「特別養護老人ホームの入所申込者の状況」によると、2025年4月1日時点で要介護3以上の入所申込者は20.6万人、うち在宅の人は8.6万人です。要介護1・2(特例入所の対象)は1.8万人(うち在宅0.9万人)でした。なお、ウェブ上でよく見る「約27.5万人」は前回2022年度調査の数字(要介護3以上25.3万人と要介護1・2の2.2万人の合計に相当)で、最新版ではありません。

Q.特養は平均何年待ちですか?

A.全国の平均待機期間を示す公的な統計は、厚生労働省が公表している資料には含まれていません。この調査が集計しているのは入所申込者の人数だけで、待機期間は集計事項に入っていないためです。したがって、この記事では待機期間の目安を示していません。年数を挙げている記事があった場合は、その数字がどこの何の集計なのかを確認してください。

Q.申込者が20.6万人ということは、20.6万人が入所待ちなのですか?

A.そのようには読めません。厚生労働省の公表資料には3つの注記があります。第一に、重複申し込みや申し込み後に亡くなった方などの排除は、各都道府県への依頼ベースで行われています。第二に、長期間にわたり施設の申込者名簿に登録されている方も含まれており、入所を希望する時期や条件、生活環境の変化などにより、必ずしも現に入所を必要としている場合に限らないと明記されています。第三に、要介護度別の数字には按分による計上が含まれる場合があります。20.6万人は「申し込みが集計された人数」であって、「いま入所が必要な人数」ではありません。

Q.要介護1・2でも特養に申し込めますか?

A.特養の新規入所は平成27年4月から原則として要介護3以上ですが、要介護1・2の人も「居宅において日常生活を営むことが困難なことについてやむを得ない事由がある」場合は特例入所の対象になります。厚生労働省の通知は事由として、認知症で日常生活に支障を来す症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られること、知的障害・精神障害等を伴い同様の症状・行動が頻繁に見られること、家族等による深刻な虐待が疑われること等により心身の安全・安心の確保が困難であること、単身世帯や同居家族の高齢・病弱等により家族等の支援が期待できず地域の介護サービスや生活支援の供給も不十分であることの4つを挙げています。該当するかどうかは施設の入所検討委員会の合議で判断され、施設は市町村に報告することとされています。また通知は、申込者が要件に該当すると申し立てた場合に施設が申し込みを受け付けない取扱いは認められない、としています。

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出典・参考

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言・税務相談ではありません。個別の判断が必要な場合は税理士・行政書士・弁護士等の専門家にご相談ください。

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